アジャイルに触れているとリーンという言葉に出会うことがあります。リーン(Lean)の英語の意味は「贅肉が少ない、引き締まった」というニュアンスの言葉です。また、僕の中のリーンのキーワードは「無駄をなくす、フロー効率」という感じでした。そんな感じでリーンとはなにか?についてふわっとしか分かっていないため本書を手に取りました。
本書はリーンとは何か?について書かれた本です。
本書は構成が良くて分かりやすい。はじめにフロー効率とリソース効率の違いについて学んだあとはフロー効率の特徴 ━フロー効率に影響を与える要素、法則、一次ニーズと二次ニーズ━ と続きます。そして、トヨタとリーンの関係性からリーンとは何かが理解できる構成になっています。
本ブログでは学んだことをまとめていこうと思います。
目次
- プロローグ 五〇〇倍のスピード
- 第一章 ソース重視から顧客重視へ
- 第二章 フロー効率を左右するプロセス
- 第三章 プロセスにフローをもたらす要素
- 第四章 効率性のパラドックス
- 第五章 むかしむかし……トヨタは顧客重視を通じてどのようにナンバーワンになることができたのか
- 第六章 西の荒野へようこそ……君のことはリーンと呼ぼう
- 第七章 リーンではないもの
- 第八章 効率性のマトリックス
- 第九章 これがリーンだ!
- 第一〇章 リーンオペレーション戦略の実現
- 第一一章 あなたはリーン?釣り方を学ぼう!
- エピローグ 無駄のない装いを!
フロー効率はサービスを受ける目線で考えること
本書を読む前、
フロー効率は複数のタスクを複数人で同時並行して進めるのではなく、一つ一つのタスクをみんなで早く終わらせるように進める考え方だと思っていました。たとえば、A、B、Cというタスクがあれば、3人が同時並行で進めて3日後にA、B、Cのタスクが終わることがリソース効率、3人で一つずつ進めて、1日目にA、2日目にB、3日目にCのタスクが終わらせることをフロー効率だと思っていました。
そして、本書を読んでそういうことではないと気づきます。
フロー効率とはニーズが発生してから解決するまでの時間で価値を受けている割合だと紹介されています。フロー効率が高いとはその割合が高いことです。病院の受診が例にあげられていました。患者が多くてなかなか自分の番がこない状態はフロー効率が低いです。ただ、お医者さんの立場から見ると常に診察していて稼働率が高いためリソース効率は高いと言えます。
処理する側の目線で考えると自分たちが常に稼働していれば効率的に見えるため、フロー効率の意識が薄れそうです。そこで、サービスを受ける側の目線で考えるとフロー効率が高いか低いか見つけられそうです。
開発だとプロダクトバックログに積まれてからリリースされるまで、処理されている割合を調べるとかですね。
フロー効率を影響する要素
じゃあ、フロー効率を高めようと考えるときに必要な3つの要素が本書で登場します。リトルの法則、ボトルネックの法則、変動です。
リトルの法則を使うと、「タスクの発生から完了までの時間(スループット時間)=プロセス内のタスクの数×タスクを解決するために必要な時間(サイクル時間)」と考えられます。スループットを短くにするにはプロセス内のタスクの数を減らすかタスクを解決するために必要な時間を減らすかどちらかになります。
ボトルネックの法則はThe Goalでも登場しましたが、プロセス内に複数のサブプロセスがあったとき一番サイクル時間の長いプロセスです。ボトルネック以外のスループットを上げても、ボトルネックで詰まってしまうため、プロセス全体でみると変わらないということになります。
変動はそのままの意味で一定にならないことで、1週間当たりのタスク数や人ごとに違う作業時間などです。本書では変動も3つに分類*1されていますが、その変動をコントロールしないと、フロー効率は良くなりません。
個人的にはボトルネックを特定することが重要で、ボトルネックを特定した後に変動の要素がないか調べるという順に改善するのが良いと思いました。そのために、VSM (Value Stream Mapping) があるんでしょうね。
一次ニーズと二次ニーズに分類すると無駄が見つかりそう
一次ニーズとは実際に必要な作業で、二次ニーズは一次ニーズ以外の作業です。たとえば、ボトルネックがありタスク管理が多くなることなど、本来、必要ないこと、価値がない作業です。
日々の開発を一次ニーズと二次ニーズに分類すると不要な作業が見つかったりしそうだと思いました。
リーンとはリソース効率よりもフロー効率を優先する戦略
第七章以降はリーンとは何か?という部分について学べます。その中でリーンを3つの抽象度で説明されている部分がありました。哲学や文化としてのリーン、システムとしてのリーン、メソッドやツールとしてのリーン。どれもリーンではあるんのですが、具体的であればあるほど、他業種への持ち運びができなくなります。リーンはトヨタから生まれた考え方で具体的な方法は製造業以外に当てはめにくいです。逆に抽象度の高い哲学や文化については他の業種でも適応できます。
ではリーンとは何か?というと、「リソース効率よりもフロー効率を優先する戦略」だと定義していました。
この定義を理解するには、第七章以降で説明されているリーンの生い立ちを知ると分かりやすいです。「第一〇章 リーンオペレーション戦略の実現」の一部は公開されていますね。
上記のページからの引用で、本書にも登場しますが、下記のように書かれています。「木」は比喩ですが、正しい価値観で決断できたかどうか、過去から学べたかどうかを問い続けることが大切だと書かれています。
- 今日、我々は木をもっと美しくする決断を下しただろうか? それはどんな決断だった?
- 今日、我々は木をもっと美しくしない決断を下しただろうか? それはどんな決断だった?
- 木を明日もっときれいにするために、我々はそこから何を学ぶことができる?
フロー効率を高めるために決断が出来たかどうか、それを問い続け、改善し続けることがリーンへの一歩であり、リーンだと言える状態かもしれませんね。
まとめ
構成が良くて分かりやすい、読みやすい書籍でした!
- リーンはリソース効率よりもフロー効率を優先する戦略
- フロー効率はサービスを受ける側が価値を受け取っている割合
- 取り入れやすいツールやシステムに着目するのではなく、目的を理解し、
抽象度の高いレベルで取り入れる。
抽象度の高さを注意しないといけない点はアジャイルも同じだと感じました。アジャイルを「デイリースクラム」のような取り入れやすいプラクティスの集まりとして捉えるか、アジャイルマニフェストレベルの抽象度の高い価値観として捉えるかで導入方法が変わってきます。リーンに限らず、何かを取り入れる時は抽象度は意識したほうが良さそうだと思いました。
その他
This is Lean に関する他の方のブログを見つけました。