会ったこともない岩田さんを好きになれる、そんな書籍です。
それほど、開発に対する情熱や人柄、仕事に対する価値観が語られていました。任天堂のゲーム機やソフトをどのように作ってこられたかが書かれていて、開発されている方は共感できる部分や参考になる部分が沢山見つかると思います。開発メンバーとの関係構築やチームについても書かれており、マネージメントやリーダーの立場にある方にもお勧めできます。
でも、そういったビジネスや開発に役立つ部分だけではなく、心が温かくなるような、少し切なくなるような、そしてやさしくなれるような、そんな不思議な気持ちにもなれます。
岩田さんを知っている方も知らない方も、任天堂のゲームをプレイされたことがある方もない方も、「おとなもこどもも、おねーさんも」*1多くの方に読んでほしいと思える一冊でした。
それでは、特に気になった部分をまとめていきます。
- 作者: ほぼ日刊イトイ新聞,100%ORANGE
- 出版社/メーカー: 株式会社ほぼ日
- 発売日: 2019/07/30
- メディア: 新書
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成長にはフォロワーが大切
人間はやっぱり、自分のやったことをほめてくれたりよろこんでくれたりする人がいないと、木には登らないと思うんです。
「高校時代。プログラムできる電卓との出会い。」より
初めて作ったゲームを喜んでプレーしてくる友人が人生にいい影響を与えていると語られていました。子どもだったり、開発仲間だったり、友達だったり、何か作ったものを見せてくれることがあると思います。そんな時、素直に良い点を見つけて伝えることが大切だと思いました。
僕の子どもはモノを作ることが大好きで段ボールや空き箱を使って色んな工作をして見せてくれます。見せてくれたら良くほめているのですが*2、それが影響して工作好きになっている部分もあるんだろうと思います。僕も作ったものが全く評価されなかったり、関心を示してくれる人がいないと継続することは難しいと思います。
子どもに限らず、ポジティブな行動にはポジティブなフィードバックを返して、ポジティブループが回るようにしていきたいですね。そして、自分で何か新しいチャレンジを始めるときは共感してくれたり、ほめてくれるフォロワーを見つけることが継続するコツだと思います。
相手のために行動できると強い
人が相手の言うことを受け入れてみようと思うかどうかの判断は、「相手が自分の得になるからそういっているか」、「相手がこころからそれをいいと思ってそう言っているのか」のどちらに感じられるかがすべてだとわたしは思うんですね。
「半年に1回、社員全員との面談。」より
成功を体験した集団を、現状否定して改革すべきではないと思います。
「成功を体験した集団が変わることの難しさ。」より
本書を通して、社員一人一人をしっかり見てリーダーシップを取られていると感じました。1on1の心構え、改革するときの進め方、チームの作り方、アウトプットに対する考え方、どれも自分のためだけではなく、相手がどう感じるか、何を考えているのかを確認してコミュニケーションを取られていました。
チームで開発するためにお互いを知ることがとても重要だと最近特に思うようになりました。また、その大切さを理解していても相手を分かったつもりになったり、そもそも考えられていなかったりして出来ていないことがあると思います。ただ働いているだけでは相手の価値観や得意なこと、好きなこと、苦手なこと、立場によるプレッシャーなど分からないことだらけです。それを分からないまま働いていると「よく分からないけど、急に仕様が変わった」「開発がスケジュール通りに終わらせてくれない」「私だけが頑張ってる」など、コミュニケーションに壁ができてしまって開発がスムーズに進まず良い製品が作れません。
そういった場合、一言質問するだけで誤解がとけたり相手を理解できたりします。僕もそうしたいと思うし、そういうことが当たり前にできるような雰囲気作りをしたいと思います。相手を理解するためのエクササイズはたくさんあると思いますが、これをすれば相手を理解できるっというような画一的な手法はありません。*3 やっぱりお互いに分かり合おうと思うことが大切で、そうなるように支援できればなぁと思います。
自己組織化の形
つまり、「こうなりたい」というイメージをチームの全員が共有したうえで、現実的な問題が起こったとき、あるいはおこりそうなときに、誰かが発見して、自然と解決していく。それが理想のかたちなのかもしれませんね。
「プロジェクトがうまくいくとき。」より
スクラムが目指す自己組織化されたチームのことだと思いました。スクラムマスターはチームがこの状態になれるように支援する必要があるのですが、僕はまだまだ難しいと思いますし、できてないなと思います *4 ただ、徐々に分かってきたことがあって、それは共通のゴールをチームで確認し、現状をチームメンバーが理解していれば、こういった状態になりやすいということです。認定スクラムマスターの研修でも、自律的なチームの条件にゴールが明確で、何をすべきか0.1秒以内に判別できることだと教えてもらいました。そうなる仕組みがスクラムには作られていて、スプリントごとにゴールを設定し、スプリントプランニングやデイリースクラムで状況把握が可能になります。スクラムマスターとしてはこの枠組みを使って自己組織化されたチームになれるように支援していくのが良いんだろうと思っています。
オーナーシップは持てているか
日常的に触ってたら、いつの間にか、テレビゲームのおもしろさを理解することになった、っという人が増えたらすばらしいなっていうふうに真剣に思っています。
「わたしたちが目指すゲーム機。」より
作っている製品や、その先の使ってくれる人のことをとことん考えられているかどうかについて考えさせられました。「使われるかどうか分からないけど、言われたから取りあえず作ってます」状態にならないように「なぜこの機能が必要なのか」話すことが大切だと思います。そのほうが納得して作れますし、より便利な機能、より楽しい機能に進化します。やはり作った製品でその人の生活が便利になったり、豊かになってほしいなって思うので、使ってくれる人のことを考えて考えて考えて開発したいなと思います。
さいごに
色んな読み方が出来る本だと思います。「見える化」「仕組みに名前を付ける」「1on1」「判断の仕方」「改革の進め方」など開発の参考にもなる部分が多々ありました。仕事に対する考え方も参考になりましたし、岩田さんという方を知ることもできます。そういった意味で多くの方に読んでほしいと思える一冊でした。
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