「イシューからはじめよ」を読みました。僕には色々とやりたいことがあります。そのやりたいことをそのまま手段から入ってしまうので、「なんのために取り組むの?」と質問されたとき、「やりたいから!」と答えになっていない答えを返してしまいます。これでは、まわりを巻き込みながら進めることは困難です。
「こういう理想があります。今はこういう現状です。理想の状態にするにはこの課題を解決する必要があるんです!だから、この手段を使うのです!!!」
このように、課題を見つけ、その課題を解決する手段としてやりたいことを使えればよいのです。だから、必要性の高い課題を見つけることが重要なのです。
本書は必要性の高いイシューに取り組む重要性と特定方法が学べます。また、そのイシューの伝え方が学べます。
目次
- 序章 この本の考え方―脱「犬の道」
- 第1章 イシュードリブン―「解く」前に「見極める」
- 第2章 仮説ドリブン(1)―イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
- 第3章 仮説ドリブン(2)―ストーリーを絵コンテにする
- 第4章 アウトプットドリブン―実際の分析を進める
- 第5章 メッセージドリブン―「伝えるもの」をまとめる
- おわりに 「毎日の小さな成功」からはじめよう
必要性の高いイシューに取り組むと生産性が高くなる
解くべき問題を見極める。これが本書を通して伝えたいことだと思います。
問題の多くは解決する必要がありません。数少ない解決すべき問題を見つけ、同じ労力でも大きな成果を出しましょうと序章で説明されています。
- 生産性は「成果(アウトプット) / 投下した労力・時間(インプット)」
- 成果は「解の質✕イシュー度」
- 解の質は「イシューに対する明確に答え」
- イシュー度は「問題に答えを出す必要性の高さ」
スクラムだとふりかえりで見つかるTryやプロダクトバックログの順番に使える考え方ですね。それ以外でも年始や年度始まりで目標を立てる際にも使える考え方です。自分の立場でしか解けないイシューと向き合うのです。
イシューを見極める
「第1章」では必要性の高いイシューの特定、見極め方が学べます。特に「仮説を立てる」という考えを知れたのは良かったです。「ブログを書くとどうなるのか?」ではなく、「ブログを書くことで技術力が向上するのではないか?」と答えを知りたいことについて明確に問うことで、調べる範囲が絞れて無駄な作業を減らすことができるということです。
本書の中で良いイシューの3条件として紹介されている1つにも仮説が含まれています。
- 良いイシューの3条件
- 本質的な選択肢:イシューに答えが出たとき、今後の方向性に変化が起きるかどうか
- 深い仮設がある:直観に反するか、新しい発見があるか(共通性、関係性、グルーピング、ルール)
- 答えを出せるか:今の技術で答えが出せない課題は着手しない
仮説の立て方は「問いのデザイン」も参考になります。
iucstscui.hatenablog.com
情報収集
仮説を立てるにも材料が必要で、その材料の収集方法についても「第1章」に書かれています。そこで3つのコツが紹介されていて、その中でも「一次情報に触れる」は大切にしたいと思いました。人づてではなく、自分の五感を使って得た情報は大きいです。実際に作ったプロダクトを使っているユーザーを見ると、ちょっとした仕草が気になったりします。そして、それは誰かがまとめたレポートでは省かれる可能性があるため、一次情報に触れることは大切だと思います。
- 一次情報に触れる
- 基本情報をスキャンする
- 集め過ぎない・知り過ぎない
イシューを分解し、ストーリーにまとめる
「第2章」はイシューを分解し、ストーリーにまとめる方法が学べます。ストーリー?っとなるかもしれませんが、「問いのデザイン」では「課題」を「関係者の間で「解決すべきだ」と前向きに合意された問題のこと」と定義されていて、関係者と合意するために納得できるストーリーが不可欠になるのです。
分解はMECE(ダブリなくモレなく)で意味のある切り口で分解する必要があり、そのためのフレームワークが紹介されています。3C分析やビジネスシステム、など切り方は色々ありますが、重要なことはMECEであるかどうかです。一人でMECEかどうか気づくことは厳しいと思いますので、相談しながら進めると良さそうです。
ストーリーラインは2つの型が紹介されていました。そのうちの「空・雨・傘」という手法は初めて知りましたが、僕の弱さを補う手法だと思い、知れて良かったです。「黒い雲が増えてきている」→「雨が降りそうだ」→「傘を持っていこう」の順に「前提の確認」→「課題の深堀」→「結論」の形に当てはめて説明する手法です。手段から入りがちな僕としては前提の考慮漏れなどに気づける型です。
ストーリーを図解する
「第3章」はストーリーラインを伝えるための図解について説明されています。
分析とは比較することと本書で説明されており、比較、構成、変化を表現する例や軸の考え方からデータの取り方まで学べます。
分析でぶつかる罠
「第4章」は分析を始めたときの心構えと起きやすいトラブルとその解決方法について学べます。データ集めが難しいときのフェルミ推定、回転率、スピードを上げるための60%の完成度を目指すなどです。
必要性の高いイシューに取り組むということは、今の当たり前を疑い、大きく変えようとする取り組みなので簡単には答えが出ないと思います。本章で書かれたヒントを活用して四苦八苦しながら前進するしかなさそうです。簡単な問いじゃないことは分かってます。
イシューを伝える
「第5章」はこれまでの分析した結果について整理整頓し伝えるコツが具体的に書かれています。具体的な方法が書かれているのですが、この章で大事だと思った部分は抽象的な以下です。
第一に聞き手・読み手と自分の知識ギャップを埋める。聞き終わったあと同じ問題意識を持ち、同じように納得し、同じように興奮してくれるのが理想。
ひとつ、聞き手は完全に無知だと思え
ひとつ、聞き手は高度の知性をもつと想定せよ
(デルブリュックの教え)
何か考えを発表したとき、発表者と受け手で温度差を感じることがあります。その謎は本書を読んで解けました。前提の理解度が違うからですね。発表者は時間をかけて検討したため、受け手の知らない情報(前提)があります。それを伝えずに結果だけ発表するため、伝わらず温度差が生まれるんですね。良いイシューを見つけられるようになっても、伝え方でミスすると行動に結びつかないと思いますので、本章も重要です。
まとめ
- 取り掛かるよりも前に、良いイシューか検討する
- イシューを見極めることで生産性が上がる
- イシューは仮設として言語化する
- イシューを伝えるときは前提から説明する
- 今年のテーマでもある図解は引き続き学んでいく