はんなりと、ゆるやかに

アジャイル、スクラムが好きが日々から学んだことをアウトプット

成長型マインドセットを養って九九を覚える

息子の学校でかけ算の九九のテストがあります。テストは各段を一定秒以内で言えれば合格となります。息子は練習しても不合格になり落ち込んだりイライラしていました。その結果、勉強にもやる気が出ていません。もちろん合格することも大切ですが、合格に向かって成長していることも大切です。成長しているにも関わらず、合格ラインだけに注目して落ち込むのは違うのです。

TEDで以下の講演があります。
www.ted.com

合格「する」か「しない」ではなくてプロセスを評価しましょう。合格しないのは「まだしてない」だけであり、成長曲線の上にいるだけです。能力は成長できるものだという「成長型マインドセット」を養いましょう。というメッセージです。

バーンダウンチャートで成長を見える化

子どもと「次合格するかどうかを目指すのはやめて、今日より明日が良くなることを目指そう」と話しました。そこで、練習で測った時間を入力できるグラフを用意しました。早くなればバーンダウンチャートのようにグラフが下がっていきます。練習する度に〇印をつけて昨日よりも今日が良くなっていることを見える化しました。
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効果が見える喜び

「合格は無理そうだけど、昨日より良くすることはできそうだ!」ということで子どももやる気を取り戻して練習を始めました。今までと違い昨日よりも良くなったことを喜ぶようになりました。「昨日よりも良くなったよ!」って報告してくれます。
導入してから3日後ぐらいに合格したのでグラフは短く終わりましたが、成長を見える化した効果でやる気を持って続けることができました。別の勉強も同じように昨日より良くなったことを教えてくれるようになりました。

高い目標は小さな成長を見える化しよう

目標の高い低いは本人によって異なりますが、高すぎる目標だけを目指していると途中の進捗が見えずに心が折れてしまいます。進捗や成長を見える化すれば目標に近づいていることがわかり、モチベーションアップにつながりますね。

まとめ

  • 結果ではなくプロセスをフィードバックして成長型マインドセットを養おう
  • 日々の結果を見える化してモチベーションアップに繋げよう

「問い」がチームを変える /「15分スプリントを2年間やったけど質問ある?」に参加した

10/14に開催された「15分スプリントを2年間やったけど質問ある?」に参加しました!「15分スプリント」という強烈なワード。気になりますよね。なぜやっているのか、どうやっているのかについて知りたくて参加しました。そして、ばっちり疑問が解消されました。開催ありがとうございました!

connpass.com

id:kyon_mm さんのブログで当日の動画のアーカイブ、スライドがまとめられています。詳細は是非そちらをご覧ください。
kyon-mm.hatenablog.com

内容

まず、スプリントスクラムの用語です。スクラムは1週間や2週間や1ヵ月とあらかじめ決めた一定の周期の中で計画、開発、ふりかえりをします。この一定の周期のことをスプリントと呼びます。スクラムガイドには「スプリントは1ヵ月以下にしましょうね」と書かれていて、単位からして違う「15分スプリント」のすごさが伝わってくるかと思います。そもそも、なんでそんな極端なことを思いついたのか気になりますよね。

興味を持った方は是非動画を見てください。

やりはじめた理由

  • カイゼンの鈍化を感じ、もっと良くなるため方法を模索していた
  • Googleの採用面接の記事を見て、極端に単位を変えてみるアイデアが生まれた
  • 徐々にスプリントの単位を短くしていった

やり方

  • 1Month、1Week、1Day、1Hour、15min ごとの粒度の異なるプランニングとスプリントレビューとふりかえり
    • それぞれの粒度に合わせた独自のプラクティス(KPT as ARTなど)

感想

単位を変えるというアイデア

15分スプリントを始めた理由は「もっと成長したい」とシンプルな動機でしたが、それを実現するアイデア「単位を変える」がエクストリームな方法でした。僕が同じGoogleの記事を読んでも「単位を変える」が開発プロセスに応用できるという発想にはならなかったと思います。また、具体的なプロセスに落とし込んで形にされたこともすごいですね。
「単位を変えた問い」が開発プロセスに応用できると分かったので参考にしたいと思います。

Keepをパタンランゲージとしてまとめる

なぜかうまくいくことをパタンランゲージとしてまとめる取り組みが面白いと思いました。他チームへ自分たちのチームを紹介するときに使えますし、自分たちのチームの強みが一覧でまとまっているのは自身にも繋がりそうだなと思いました。

まとめ

  • 15分スプリントは「もっと成長したい」という思いから始まった
  • 「単位を変える」という問いは革新的なアイデアを生む

関連記事

良い「問い」を立てるための書籍を紹介しました。
iucstscui.hatenablog.com

なぜスクラムなのか?を考えた記事もあります。
iucstscui.hatenablog.com

改めてスクラムの目的を考える

スクラムは少ないルールで構成されているため「理解が容易」と言われていると同時に「習得は困難」といわれています。「習得が困難」といわれる理由はスクラムが決定的な方法論ではなく、常に変化に適応していくためのフレームワークだからではないでしょうか。スクラムガイドで定義されている「やり方」をマネするだけではなく、結果から問題に気づき、「やり方」を変え続ける必要があります。ときにはスクラムという既存の型から抜け出し、新たな型を見つけることも必要です。守破離と呼ばれたりもしますね。

プロジェクトやメンバー構成によって取り入れるプラクティスや進め方が変わりますし、状況によっても変わります。馴染みの店に入って「いつもの!」って頼むわけにはいかないのです。そんなわけで、唯一の解をスクラムに求めていると理解は困難だと思います。

そこで、一度「やり方」から離れて、スクラムが大切にしていること、各ロールやイベントや作成物の目的。「本質」の部分に注目することでスクラムの理解が深まると考えたのが本記事です。

僕もスクラムに関して色々な書籍を読んだり、何度もスクラムガイドを読んだり、実践したりしながら習得しようとしています。色々なところから得た知識を色々な視点でまとめてみることで理解を深めたいと思っています。今回もスクラムガイドを読みながら「本質」と向き合ってみます。
スクラムガイド2017

スクラムは「複雑で変化の激しい問題に対して可能な限り価値の高いプロダクトを生産的かつ創造的に届ける」ためのフレームワーク

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まずはスクラムの得意領域とそのアプローチ方法について整理していきます。スクラム複雑で変化の激しい問題に対応するためのフレームワークです。問題分類で有名なクネビンフレームワークの「複雑」にあたる領域が得意領域です。スクラムを利用すれば正解が分からない問題に対して可能な限り価値の高いプロダクトを生産的かつ創造的に届けることができます

その「複雑」にアプローチする方法が経験主義となります。未来を予知することはできない、今までの経験から正解を探していきましょうという考え方です。「ちょっと試して違う」、「少し変えて試して違う」、「また少し変えて試して手ごたえがあったぞ」と今分かっている情報から最善の意思決定をして行動する。その結果を観察して次の行動を決める。を繰り返します。OODA(ウーダ)・ループに近いですね。

経験主義でアプローチと言われても簡単ではありません。そこで登場するのがスクラムの3本柱と呼ばれる「透明性」「検査」「適応」です。

  • 透明性:プロダクトに関わる人々の共通理解を図る
  • 検査:好ましくない変化を検知する
  • 適応:プロセスやプロダクトを調整する

スクラムチームはこの3本柱をスクラムイベント、作成物によって太く高くすることで経験的プロセスを確かなものにしていきます。スクラムイベント、作成物は3本柱のためにあります。

柔軟性、創造性、生産性を最適化するためのスクラムチームと3つのロール

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スクラムイベント、作成物を進めていくスクラムチームを整理していきます。改めて、スクラムは複雑で変化の激しい問題に対して可能な限り価値の高いプロダクトを生産的かつ創造的に届けるためのフレームワークです。それを実現するためにスクラムチームは柔軟性・創造性・生産性が最適化するように設計されています。

各ロールの目的は下記になります。

  • プロダクトオーナー:プロダクトの価値を最大化するために機能とその機能の作る順番を決定する
  • 開発チーム:プロダクトを開発する
  • スクラムマスター:スクラムチームの作る価値を最大化する

ロールごとに目的が明確になっているからこそ、迷いなく集中して開発できます。「ユーザーのことを理解しなきゃ」「機能を完成しなきゃ」「検査が弱くなっているからチームに伝えなきゃ」と色々なことをマルチタスクで進めようとすると混乱が生じ、問題が起こるでしょう。

開発はこの3つのロールで協力しながら進めていきます。プロダクトオーナーはユーザーに価値のある仕様を考え開発チームが納得できる方法で説明をし、開発チームは納得できるまで仕様について質問し最適な方法で開発する。スクラムマスターは透明性が向上するようにティーチングやコーチングで全員をフォローします。ロールは分かれていますが、別々に作業するのではなく協力しあって進めていきます

3つのロールに分けることでマルチタスクを減らして生産性を最適化、異なるロール同士で対話することで創造性を引き出します。さらに自己組織化されたチームなので、やるべきことを自分たちで選択します。その選んだ内容は機能横断的なチームによって助け合いながら開発し柔軟性をもたらします。

ただ、ロールを分けることで対立が起きやすくなり、信頼関係にヒビがはいる悪い面もあるため、スクラムの価値基準である「確約・勇気・集中・公開・尊敬の価値基準」が重要とされています。そちらは以前まとめています。スクラムの価値基準をもっと知る - はんなりと、ゆるやかに

透明性、検査、適応を実現するためのスクラムイベント

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それぞれのイベントで対象となる部分は異なりますが、すべては透明性、検査、適応のためにイベントがあります。

  • スプリント:インクリメントを完成させ、プロダクトの透明性を高める
  • スプリントプランニング:スプリントで何を届けるのか決めて、どう作るのか決めて透明性を高める
  • デイリースクラム:スプリント中の進捗の透明性を高め、課題がないか検査し見つかった場合は適応し、チームのコラボレーションやパフォーマンスを最適化する
  • スプリントレビュー:完成したインクリメントからフィードバックや協力を引き出す
  • スプリントレトロスペクティブ:人・関係・プロセス・ツールの観点から検査し、改善計画を立て適応する

同じペースでリズムよく作り続けることが目的ではなくて、作ったインクリメントから次に作るものを変化させていくことが目的です。見えるものを作る→検査→適応→見えるものを作る→検査→適応→・・・を繰り返して変化に対応していきます。

スプリントではスプリントバックログと別にスプリントゴールを決めます。これはスプリント中の柔軟性を高めるためです。スプリントバックログを開発してもスプリントゴールが達成できないことが分かればプロダクトオーナーと相談して調整します。

透明性や検査、適応の機会を提供するための作成物

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経験主義において作成物は次の計画を立てるために重要な要素です。特にインクリメントはプロダクトバックログ、スプリントバックログを変化させるための要素です。アジャイルマニフェストの「包括的なドキュメントよりも動くソフトウェア」を体現するものです。今動くもの、市場、フィードバックの声などから適切に変化させていくのです。

  • インクリメント:スプリント終了時の経験主義を支援する
  • プロダクトバックログ:プロダクトに対する変更要求を透明化する
  • スプリントバックログ:スプリントゴールを達成するのに必要な作業を透明化する

スクラムガイドに書かれていますが、スクラムは透明性に依存しています。その透明性を維持するために作成物が重要になり、「完成(Done)の定義」は透明性を保つ重要な要素です。作業の完了についてメンバーが共通の理解を持ち、透明性を確保するために完成(Done)の定義を運用しましょう。

まとめ

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スクラムは経験主義をベースとした「複雑で変化の激しい問題に対して可能な限り価値の高いプロダクトを生産的かつ創造的に届ける」ためのフレームワークです。「透明性」「検査」「適応」の3本柱をスクラムチーム、スクラムイベント、作成物で高めて開発を進めます。スクラムを導入するとき「デイリースクラム」や「ふりかえり」から始めるチームもあると思います。そんなときこそ、やり方をマネするだけでなく、何のためにそのプラクティスがあるのか把握することが重要です。改めてスクラムの目的を考えることが大切です。

一人で読むだけでは気づけないことに気づける / SCRUMMASTER THE BOOK読書会 第1章 に参加した( #京アジャ )

2020/10/09に開催された「SCRUMMASTER THE BOOK読書会 第1章 in 京アジャ」に参加しました。京アジャの開催頻度があがって嬉しいです。
kyoaja.connpass.com

今回の読書会は記念すべき1回目です。第1章「スクラムマスターの役割と責務」について読書会をしました。本イベントの読書会は事前に対象の章を読んできて、その章について気になるキーワードなどについてディスカッションする進め方でした。同じ本を読んでも気になる部分が違っていていろんな話が聞けて良かったです。読書会の良いところですね。気になった話題についてまとめておきます。

当番制で自己組織化を促す

チームの中でスクラムに詳しい人がいたら、各メンバーが頼ってしまうことありますよねって話がありました。そうなってしまうと自己組織化から少し外れてしまいます。こういうことはスクラムに限らずありますね。2つのアイデアが出ました。「当番制」と「アウトプット」です。

当番制

特定のMTGのファシリテートを当番制にしたり、スクラムマスターという役割を当番制にしたり色んなアイデアが出ました。自分がその当番になると当事者になり責任感が生まれますし、ファシリテータの苦労も経験出来て当番以外のときの振る舞いも変わります。

そういえば学生の頃も日直がありました。日直ってどういう目的で実施されていたのだろうと気になって調べてみました。
釧路市の新学級経営ハンドブック
新任の先生へ向けて~学級日誌、日直の仕事、家庭訪問事前調査~(寳迫芳人先生) | 学級経営の学習指導案・授業案・教材 | EDUPEDIA(エデュペディア) 小学校 学習指導案・授業案・教材

上記2つのページを見て書かれていたことは以下です。

  • 1日リーダー体験
  • 仕事の存在とやり方を覚えてもらう
  • 模範的な生活態度や支持的風土の醸成を図る
  • 人前で話すことに慣れ、自信を持ってもらう

この目的を見ても当番制って効果がありそうですね。改めて学校の生活は色んな目的をもって運営されていたんだなーって思いました。

アウトプット

アウトプットする練習をすると、他の場でも意見が出せるようになって自己組織化が進むというアイデアがでました。このアイデアは意識したことなくて「なるほど」と感じました。たとえば勉強することをアウトプットしてもらい、他の人はその感想をアウトプットしてもらうと教えてもらい活用できそうだと思いました。日直の当番とも似た効果がありそうですね。

スクラムガイド通りのスクラムに拘るメリットはあるのかな?

スクラムを始めると「スクラムの型にのっとって進めた方が良い」という話と「手法から入ると良くない」という話があると思います。どちらも間違いじゃないと思います。また人によってやり易い進め方があるという意見もありました。目的も知ろうとせず手法だけ取り入れるのは良くないと思いますが、「ふりかえり」や「デイリースクラム」だけ取り入れるように一部だけ取り入れても良いというのが最近の僕の考え方です。自分たちで自分たちの開発のより良いやり方を見つけようとしている状態が大切ですよね。

まとめ

  • SCRUMMASTER THE BOOK読書会に参加しました
  • メンバーのリーダーシップを促す仕組みを入れて自己組織化を目指す
  • 学校の仕組みを調べると自己組織化のヒントが見つかりそう
  • 開発のより良いやり方を見つけようとしている状態が大切

次回もあれば参加したいと思います!運営のみなさん、参加のみなさんありがとうございました!

特定のコミットを取り込むGitコマンド:cherry-pick

別ブランチの特定のコミットだけを取り込みたいことはありませんか。

そんな時に使えるコマンドが git cherry-pickです。git cherry-pickは特定のコミットだけを取り込めます。
git-scm.com

今回の検証に使ったgit version は 2.28.0 です。

変更を取り込む

git cherry-pickコマンドは1つ、もしくは複数のコミットを指定して取り込めます。

git cherry-pick <branch名>

指定ブランチの先頭にあるコミットをチェリーピックします。

git cherry-pick <コミットのハッシュ値>

指定したコミットをチェリーピックします。

git cherry-pick <開始コミットのハッシュ値>..<終了コミットのハッシュ値>

指定した間のコミットをチェリーピックします。開始のコミットはチェリーピック対象に含まれませんが、終了コミットは含まれます。

cherry-pickと一緒に使うオプション

-x

チェリーピックしたコミットのメッセージに(cherry picked from commit XXXXX)が追加されます。どこから持ってきたコミットか記録する場合に便利です。

-n

通常、チェリーピックしたコミットは自動的にチェリーピック先のブランチへコミットされます。本オプションを付けるとコミットはされずにファイルのコピーだけが行われます。複数のチェリーピックを一つのコミットとして扱いたい場合に便利です。

-e

チェリーピックしたコミットのメッセージが変更できます。指定しない場合はチェリーピック元のコミットメッセージがそのまま使われます。

まとめ

  • 特定のコミットを取り込むGitコマンド:cherry-pickを調べた
  • オプションでコミットメッセージを変更したり、コミットせずにチェリーピックする方法が分かった

スクラムマスターのための本 / SCRUMMASTER THE BOOKを読んだ

SCRUMMASTER THE BOOK を読みました。

実は原書である「Great ScrumMaster, The: #ScrumMasterWay (Addison-Wesley Signature Series (Cohn)) (English Edition)」がとても良い本だと聞いて、「英語だけど・・・興味のある分野だし!」っと買いました。しかし、やはり英語が読めず・・・心が折れていました。好きでも心折れることってあるんだなーって途方に暮れているとき、この本の訳を進めているという情報を耳にし、ワクワクして待っていました。ということで、待ちに待った発売です!訳者のみなさんありがとうございます!

本書はスクラムマスターについて書かれた本です。スクラムを学んだけど、結局スクラムマスターって何すればいいの?CSM(認定スクラムマスター)を取得したけど何から始めよう。スクラムは自己組織化が大切だって言われるけど、どうしたらいいの?そういった迷いや悩みに寄り添ってくれる本です。そして、それを待ち望んでいました!

この本を読み、行動して、偉大なスクラムマスターの一歩を踏み出します。

スクラムマスターとは

一旦、本書から離れてスクラムガイドスクラムマスターの項目を確認してみましょう。要約するとスクラムマスターの役割は大きく2つです。

また、CSMの研修でスクラムマスターに必要なスキルは以下の5つだと教わりました。

  • ティーチング
  • ファシリテーリング
  • メンタリング
  • コーチン
  • シチュエーショナリング

ソフトウェアエンジニアからキャリアをスタートしているとなかなか触れてこないスキルが必要とされます。また、メインの役割が支援ということで決まったアウトプットがありません。プロダクトを作っていれば何らかしらのアウトプット、アウトカムがあり、正しさを感じられますが、スクラムマスターはチームや組織の成長がアウトプットであり、アウトカムです。結果が目に見えづらく不安になることもあります

必要なスキルは広い。状況に応じてやるべきことを自分で見つけていかなければならない。そんな役割がスクラムマスターです。奥深い。そして難しい。

目次

本書はそんな悩みに答えてくれる書籍です。スクラムマスターとは何か?必要なスキルとチーム、組織との向き合い方が体系的にまとめられています。

第1章 スクラムマスターの役割と責務
第2章 心理状態モデル
第3章 #スクラムマスター道
第4章 メタスキルとコンピタンス
第5章 チームを構築する
第6章 変化を実装する
第7章 スクラムマスターの道具箱
第8章 私は信じています

チームを観察し調整する

スクラムマスターのやることの一つが観察と調整だと思っています。思っているんですが難しい。

明らかに良いこと、明らかに悪いことは気付けます。しかし、うまくいってるように見えて実は良くない状況に気づけるかが重要です。かつ、その状況にチームが気づき、チームが変わっていくように支援することはもっと重要です。そこが僕には出来てませんでした。どうすればいいのか分かってなかったのです。

本書の「第5章、6章、7章」でそのあたりが学べます。チームの発達段階を表す手法で有名なタックマンモデルか登場し、各フェーズでチームはどういう行動をするのか、スクラムマスターはどういうスキルを使うと良いのかがまとめられています。それ以外にも様々な視点で観察する手法がまとめられています。どの手法を読んでも「あー!あるある!!」っと今のチームの位置を見つけられると思います。

また、チームだけでなく自分の発言や行動を振り返るきっかけにもなりました。自虐的な発言が癖づいていて、それはチームや周りにとっても毒だなーって反省しました。日常的なコミュニケーションからチームは変わっていきます

本書を読んでチームの状態を把握する準備は整いました。僕にとって大きな武器が手に入ったなーと思います。あとはしっかりと使って、定期的に整備して、実験を繰り返していきたいと思います。

チームから組織に目を向ける

第3章は#スクラムマスター道です。偉大なスクラムマスターになるためのレベルが書かれていました。チーム支援から始まり、組織支援へと活動の幅が広がっていきます。

幅広い考え方だなーと驚いて、スクラムガイドを見直してみると、スクラムガイドにも組織を支援すると書かれてありました。どうやら僕の考えが狭かったようですね。。。

ただ、スクラムガイドにはレベル別で書かれていません。スクラムマスターの支援先とし、プロダクトオーナー、開発チーム、組織の項目が並列で書かれています。一度にすべてを考えるのも難しいですよね。なので本章のようにレベル別に活動の幅が書かれているのは一つひとつに集中できて良いなと思いました。

まずはチームをうまく支援できるスキルを身につけたいと思いますが、そこにとどまらず他のスクラムマスターとコミュニティを作って組織支援という視点でも考えていきたいと思いました。スクラムマスターという名前からスクラムチームに閉じた印象を持っていましたが、もっと幅広く活動する場所がありますね

偉大なスクラムマスターになるため

本書は色んな理論を研究し、実験した結果がまとめられていると感じました。クネビンフレームワーク、タックマンモデル、チームの5つの機能不全、などなど。理論の説明だけでなく理論に当てはめてスクラムマスターはどうすれば良いのか教えてくれます。

色んな理論を知るだけではダメで、具体的で実践可能なアクションに落とし込んで実験、検査、適応のサイクルをまわす大切さに気付かされました。

自分自身の学びもスクラムのように小さな実験を繰り返しながら進めていきます。

まとめ

  • SCRUMMASTER THE BOOKを読んだ
  • スクラムマスターが抱える悩みに答えてくれる書籍
  • 新しい視点でチームを見る方法を学べた
  • 学んだことは実践が大切
  • 理論を知り、実践し、改善するサイクルが大切だと気付いた
  • 支援先をスクラムチームに限らず幅を広げていく

仕事、子育て、プライベート、すべてを豊かにするためのコミュニケーション / NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法

NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法の書籍を読みました。

NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)は単語を聞いたことがあるレベルでしたが、下記のブログを読んで興味を持ち、コミュニティーにもお誘いいただいたのをきっかけに読みはじめました。また、本書が書籍エクストリームプログラミングの参考文献に載っていることを知り、さらに興味が高まりました。
norihiko-saito-1219.hatenablog.com

本書は人と人のコミュニケーションに関する本なので職場以外でも活用できます。夫婦、子ども、友達、親戚、あらゆるの場面で使えます。実際にNVCを使って解決したエピソードも多数紹介されています。対立関係や意見不一致の究極形である紛争を解決したエピソードもあり、緊迫した場面から日常的な場面でも活用できる手法です。コミュニケーションに悩みがある方はもちろんなのですが、コミュニケーションに悩みがない方が読んでも参考になると思います。分かってなかっただけで日常的に暴力的なコミュニケーションをとっていたと気付けますよ。

目次

第1章 心の底から与える――非暴力コミュニケーションの核心
第2章 思いやる気持ちを妨げるコミュニケーション
第3章 評価をまじえずに観察する
第4章 感情を見極め、表現する
第5章 自分の感情に責任をもつ
第6章 人生を豊かにするための要求
第7章 共感をもって受け取る
第8章 共感の力
第9章 思いやりを持って自分自身とつながる
第10章 怒りをじゅうぶんに表現する
第11章 紛争を解決する
第12章 力を防御的に使う
第13章 自分を解放し、人に助言する
第14章 NVCで感謝を表現する

NVCとは

人が本来持っている「他者を思いやる気持ち」を引き出したり、相手と理解し合うためのコミュニケーション手法です。習得すると暴力的なコミュニケーションを抑えられます。詳細は下記サイトにより詳しく書かれています。
nvc-japan.net

僕も本書を読んで方法は理解できましたし、考え方にも大いに賛同できます。ただ、意識していないと暴力的なコミュニケーションが出てしまいます。難しい。

暴力的とは

NVCが言っている暴力は相手を直接傷つけるような言葉よりももっと広い意味です。僕の理解では自分の価値観と異なる行動に対して、良い悪いを判断して会話することが暴力的です。

日常的にしてしまってます。。。

例えば、遅刻した相手に「遅れることは悪い」と伝えたり、おもちゃを片付けない子どもに「部屋が汚いから片付けようね」と指示したり、自分の価値観で相手を変えようとしてしまいます。これが暴力的です。「片付けろ!」って強い口調で伝えることだけが暴力的ではないのです。

この本を読んで暴力的とは何かを十分理解し、実践する価値があると思いました。しかし、散らかった部屋を見ると思わず「部屋が汚いから片付けて」って言ってしまいます。習慣になっていることは簡単に変えられないですね。

じゃあ、散らかった部屋は許容して我慢するの?っと疑問が出ると思いますが、そうじゃないんです。決まったプロセスでやってほしい事を伝えるんです。

4つのプロセス

NVC1.観察、2.感情、3.ニーズ、4.要求の4要素に注目しながら、会話をします。それぞれを簡単に紹介します。

1.観察

事実と意見を分けて表現します。たとえば、「部屋が汚い」は「汚い」という意見が混ざっています。「足の踏み場がないぐらいおもちゃが広がっている」と見たままを表現します。

2.感情

自分がどう感じているかを表現します。たとえば、「足の踏み場がないぐらいおもちゃが広がっているのを見て、ビクビクします。」となります。

3.ニーズ

自分が必要としていることを表現します。たとえば、「足の踏み場がないぐらいおもちゃが広がっているのを見て、ビクビクします。それは安心して部屋を歩きたいからです。」となります。

4.要求

相手に要求することを表現します。あくまで要求であって強要ではないことが重要です。相手が心から進んで実施できなければ、理由を聞き、その理由に共感ながら、お互い納得するアイデアを見つけます。たとえば、「足の踏み場がないぐらいおもちゃが広がっているのを見て、ビクビクします。それは安心して部屋を歩きたいからです。床に落ちているおもちゃをおもちゃ箱にしまってくれませんか?」となります。

これは直接的動機を引き出す方法だ

本書には登場しないのですが、行動の動機は➀楽しさ、②目的、③可能性、④感情的圧力、⑤経済的圧力、⑥惰性の6つに分けられるといわれています。さらに①~③までは直接的動機、④~⑥までが間接的動機と呼ばれます。直接的動機は行動パフォーマンスが向上し、間接的動機は減少すると言われています。

④感情的圧力は罪悪感や期待に答えなければいけないという感情から行動します。たとえば、「汚いから片付けて」と親に言われて片付けるときは、④の動機です。親が怒っているから片付けますが、渋々なのでペースは遅いです。それを見た親はさらにイライラして負の感情が強くなり、「早く片付けて」となります。悪循環。何度も経験している。。。

NVCを使ったコミュニケーションをすると、ニーズを伝えるため要求に対して目的意識が生まれやすく要求された側も納得して行動できるのだろうと思いました。②目的が動機になるわけです。

ニーズを知り、伝えることが超重要

本書の中で個人的に一番大切だと思ったキーワードは、自分に対しても、相手に対してもニーズを知ろうとすることです。たとえば、否定的な言葉を受けたときも感情的に返答するとヒートアップして仲違いになります。否定的な言葉を使った相手はどんなニーズを持っているのかを考え、その意見について自分はどういうニーズがあるかを伝えて、お互いのニーズが満たされるアイデアを一緒に探すようなコミュニケーションがとることが重要ですね。

ニーズを知ろうとすることは共感すること

共感は1on1をやるようになってからより強く意識するようになりました。NVCのプロセスは共感が大切ですし、共感を促すコミュニケーションです。相手のニーズを理解するまで相手の話を聞くのです。発言の奥にはどんなニーズがあるのか分かるまで丁寧に会話を重ねる。それが出来ると相手と(精神的に)近い位置でコミュニケーションを取ることができ共感に繋がります。

実践にはトレーニングが必要そう

NVCのプロセスを理解することはそんなに難しくないと思います。「1.観察、2.感情、3.ニーズ、4.要求」を意識してコミュニケーションを取るだけっちゃだけです。ただ、多くのことを良い悪いで評価することに慣れた生活を送ってきたので、そう簡単にはできません。本書の中に登場するたくさんのエピソードや考え方に触れ、価値観を変えていき、実践することは必須だと思います。また、本書に中にはNVCを理解できたかどうか判断できるエクササイズが含まれています。この発言は観察か?評価か?と考えていくのです。じっくり考えればわかることも突発的にその場面に出くわすと反射的に間違った判断や行動をしてしまうこともあるだろうと思います。習得は困難ですが、身につける価値は存分にあると思います。

まとめ

  • NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法の書籍を読みました。
  • 1.観察、2.感情、3.ニーズ、4.要求の4要素で会話する手法
  • NVCによって共感を促せたり、直接的動機を引き出せる
  • 理解はできるけど、実践が難しいプロセスなのでトレーニングが必要

それぞれのプロセスを深く理解する必要があるので、興味を持たれた方は本書を読んでみてください。

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こちらも人間関係の書籍です。
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