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アジャイル、スクラムが好きが日々から学んだことをアウトプット

「ヒューマノクラシー――「人」が中心の組織をつくる」を読んだ

「ヒューマノクラシー――「人」が中心の組織をつくる」を読みました。

従来の官僚主義(トップダウンの組織)には限界がある。動きが遅かったり、リスクを取らなかったり、それゆえ、イノベーションが起こらなかったりする。本書で紹介されるヒューマノクラシーはルールで縛るような方法ではまく、人の可能性を信じ、人を中心に組織をつくる方法論です。本書では官僚主義の問題点、それに対応するヒューマノクラシーの事例や方法論がまとめられています。

ところで、ヒューマノクラシーとは何かというと、「人間 (human)」と「支配・統治・制度(-cracy)」を組み合わせた造語で「人を中心に据えた組織」ということです。

本書を読んで特に気になったことをまとめていきます。

目次

Part 1 官僚主義からヒューマノクラシーへ
1 人の力、組織の力
2 官僚主義の問題点を診断する
3 官僚主義のコストを計算する

Part 2 ヒューマノクラシーのパイオニア企業から学ぶ
4 〈ニューコア〉製品ではなく、人をつくる
5 〈ハイアール〉誰もが起業家

Part 3 ヒューマノクラシーの基本原則
6 手法よりも原則を追求する
7 オーナーシップ
8 市場
9 健全な実力主義
10 コミュニティ
11 オープンであること
12 実験
13 パラドックスを超える

Part 4 ヒューマノクラシーへの道
14 〈ミシュラン〉最初のステップ
15 ヒューマノクラシーの始め方
16 ヒューマノクラシーの広げ方
参考:ヒューマノクラシー――「人」が中心の組織をつくる – 英治出版

官僚主義の問題

Part 1では、トップダウンでコントロールする官僚主義の限界とポスト官僚主義としてヒューマノクラシーという考え方について学べます。

ヒューマノクラシーは人の才能や可能性を信じている点、人を中心に仕組みを作ろうとしている点で、コーチングやスクラムの考えと通ずる部分を感じました。組織として成果を出すために、ルールで制御するのが官僚主義、価値観で制御するのがヒューマノクラシー。そんなイメージです。とうぜん、官僚主義の方がコントロールしやすいです。コントロールしやすいがゆえにイノベーションが起こりにくいのですね。想像の範囲内のことしか起きないから。

実例から学ぼう

PART2は実際の企業「ニューコア」と「ハイアール」からヒューマノクラシーを学びます。

どちらの企業からも感じ取れたことは、人を信じ任せていることと、チャレンジに寛容であることです。それに伴い、権限と責任が委譲されていることです。たとえば、ニューコアだと生産量の閾値を超えるとチームにボーナスが支払わせる仕組みになっています。良い時のボーナスは多いが、悪い時のボーナスは少ないということです。そうすることで、会社としては業績が低い時は人件費が抑えられます。業績が高い時はインセンティブがあることから、従業員のオーナーシップが向上します。

ヒューマノクラシーの基本原則

PART3はヒューマノクラシーの7つの原則が学べます。ヒューマノクラシーは厳密なルールよりも原則や基準、相互責任によって組織をコントロールすべきだと書かれています。7つの原則は目次にもある「オーナーシップ」「市場」「健全な実力主義」「コミュニティ」「オープンであること」「実験」「パラドックスを超える」です。

これらの原則はアジャイル界隈でも見かける言葉に感じました。本書籍で書かれていたことを簡単にまとめてみます。

  • オーナーシップ:プロダクトに対して自分事化する(オーナーシップを持つ)には権限委譲。
  • 市場:市場の原理を組織にも根付かせる。市場は複雑で不確実であるため、トップダウンには限界がある。
  • 健全な実力主義:社内政治で昇進するのではなく、同僚や部下からも評価する仕組みなどを取り入れよう。
  • コミュニティ:共通の目標を持ち、互いを尊敬、信頼し、愛を持って接するコミュニティーをつくろう。
  • オープンであること:戦略の立案においてもメンバーからアイデアを集め、発散させイノベーションを起こそう。
  • 実験:進化とは実験を繰り返した結果だといえる。組織が成長を止めないためにも実験する仕組みやマインドを醸成しよう。
  • パラドックスを超えるトレードオフによって悩むことが多い。目的と手段を分けて考え、AでもBでもないC案を作ろう。

単語と1行の概要では伝わりきらないと思います。本書では実例を交えて書いてあるので読んでいただいた方がイメージがわくでしょう。

「オーナーシップ」「市場」「コミュニティ」「オープンであること」「実験」「パラドックスを超える」。このあたりはアジャイル関連を学んでいても言われていることだと感じ理解しやすかったです。とはいえ、「そういった組織やチームが作れる技術を身につけられたか?」と問われるとそうではなく、力不足を感じることの方が多いです。そのため、本書のように事例を交えて紹介してもらえるのは有難いですね。抽象的な概念や仕組みだけでなく、具体的な実例から得られるものは多かったです。

ヒューマノクラシーの広め方

PART4はヒューマノクラシーはどうやって進めていくのかが学べます。特にミシュランの話は具体的で熱意のある物語でした。権限移譲を進め、主体性を引き出し、力強く、かつ確実に進めていくバララン氏のリーダーシップは憧れを感じました。PART3までに書かれたヒューマノクラシーの実現方法が良くわかるPARTでした。

今まで語られてきたことではありますが、チームに権限を任せ、コントロールを手放し、チームを活気づけ支援する。それを実感できる内容です。PART4の中にヒューマノクラシーを実現するために必要な要素は多々登場していましたが、個人的に意識したい部分は以下でした。

  • 主体的に参加してくれる人を活用する。
  • 楽しくゲームのように取り組む
  • 自分が把握している範囲で始める
  • 新しいやり方が裏付けられるまで既存プロセスも並行で進める
  • 何度も微調整して再テストする。
  • 問題に忠実でいる。自分たちで考えた解決策に惚れこまない。

まとめ

ヒューマノクラシーを読みました。今までのようなコントロールを手放し人を信じ任せ支援する進め方は怖れによって、コントロールしたくなる気持ちにかられると思います。そこはぐっとこらえて、権限を委譲し、チャレンジを推奨し、支援することをしていきたいです。また、何度か読み直しつつ、自分のチームや組織において出来ることもまとめたいと思いました。

その他

内容は全然違いますが、組織において人が一番大切だという価値観を考えると、以前紹介したTHE HEART OF BUSINESS と近いと感じました。
iucstscui.hatenablog.com