インテグラル理論、成人発達理論に興味があったことと、最近の感心事「システムコーチング」と関連性があると聞き、「人が成長するとは、どういうことか」を読みました。
タイトルの通り、人の成長とその支援方法についてインテグラル理論と成人発達理論を中心に考えていく本でした。先に前置きをすると、インテグラル理論と成人発達理論の理解が浅いまま読み始めたので難しかったです。しかし、新しい考え方を知れて、物事の見方が変化した感じがします。
自分なりに整理して理解を深めたのでまとめてみます。私が勘違いしていることなどあれば教えてください🙏
成長とは
本書の成長とは「分かりやすい文章が書けるようになる」とか「プログラミングができるようになる」とか、そういったスキルや知識が増えることだけではありません。スキルや知識を使う「自分自身の考え方」の成長です。
じゃあ、「自分自身の考え方」の成長とは?ということですが、参考になりそうな一文を引用します。
発達とは本質的に自己中心性が減少していく過程である
「これは相手の気持ちを考えられるようになる。」ということではなく、相手の考え、自分の考え、他の人の考え、慣習や文化、それぞれ違いがあることを認めつつ、全体を統合的に考えて行動できるイメージです。(このあたりがシステムコーチングっぽい考えだと思いました。)
別の言葉で説明するとメタ思考を高めることだと思いました。今の自分や取り巻く環境を客観視し、固定観念をこわしたり、異なる価値観同士を関連付けたりできるようになることが成長です。
そして、インテグラル理論は多様の発見、成人発達理論は成長の地図をサポートするものだと理解しました。
インテグラル理論と成長
インテグラル理論の重要な要素として領域・状態・タイプ・四象限があります。これは1側面だけで分かったつもりにならないこと、統合的に理解すること、が大事だと理解しました。
領域
サッカーが得意でも野球は苦手。そんな風に同じ人でも得意/苦手な領域がある。
状態
心身ともに調子が悪いとパフォーマンスがでない。優れたように見える人もパフォーマンスが出ないことはある。
タイプ
外交的な人がいれば内向的な人もいる。そこに良い悪いはない。良い悪いがあるとすれば、特定の領域に限られる。
四象限
個と集合、内面と外面のマトリクスの側面。
個の内面
自己の内面に直接的に感じられる主観領域
「感覚」「感情」「思考」
個の外面
肉眼を用いて観察できる客観的領域
「動作」「姿勢」「行動」
集合の内面
集団の構成員が共有する間主観的領域
「空気」「文化」「風土」
集合の外面
集団を支える間主観的領域
「仕組み」「制度」「社会基盤」
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インテグラルは「なくてはならない、不可欠の、欠くことのできない」という意味の英語で、本書では統合と表現されています。
そして、インテグラル理論は多様な側面を統合的に捉えるための理論です。
本書は「領域・状態・タイプ・四象限」以外にも様々な捉え方を学べます。「体・心・魂・影」「真・善・美」
色々な捉え方を知ることで、より全体を明らかにできるでしょう。
話はそれますが「傾聴」について調べていたとき、傾聴は判断しないことが重要だと学びました。本書の学びと合わせて考えると、1側面だけを知って決めつけるのはその人を知る機会を失ってしまうと気づきました。
もう一つ話をそらすと、フィードバックのフレームワークSBIモデルとも関連づきます。SBIモデルはフィードバックするときに状況(Situation)、行動(Behavior)、影響(Impact)を伝えるモデルです。ここの特定の状況におけるフィードバックだという部分が「領域」に関わりそうです。
成人発達理論と成長
成人発達理論は成人以降の成長に関する理論です。本書では成長段階(発達段階)の思考の特徴と支援方法が学べます。本書で取り上げられた段階の名前を紹介します。
- 慣習的段階
- 前期合理性段階(アンバー/オレンジ)
- 後期合理性主義(オレンジ)
- 後慣習的段階
- 第三層
- スーパー・インテグラル段階(インディゴ)
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詳細は本書を読んでいただくとして、ざっくりと説明すると成長して変化していくことは、①固定観念が外れていくことと、②多様性を認め統合できること。だと思いました。
①固定観念が外れていくこと
これについて印象的だった一文を引用します。
人間の「成長」や「発達」とは、労働者としての機能的能力を高めることを意味する概念として矮小化され、後慣習的段階の可能性は、半ば無意味なものとみなされるか、あるいは、そうしたことについて思い悩むことのできる裕福な人々の遊戯的な探求の対象とみなされることになるだろう。
成長と聞くと、仕事で役立つスキルや考え方を身につけることを想像しませんか?私はそうでした。しかし、まさにそれが固定観念だということです。たとえば、働かなくても安心して楽しく生活できる環境であったとき、「仕事で役立つスキルや考え方を身につけること」は必要ないかも知れません。このように、私たちは環境に強く影響を受けて思考しています。そのことを理解し、今の環境じゃなかったらどうなんだろうという視点で考えらえることが「固定観念が外れていくこと」です。
②多様性を認め統合できること
こちらもまずは印象的な引用を紹介します。
異なる価値観や世界観に立脚して存在する複数の立場や視点を関係づけるというものである。そして、もう ひとつは、それらの複数の立場や視点を生み出している構造を洞察するというものである。すなわち、 システムを生み出しているシステムを洞察するのである。
多様性を認め統合というと、ダイバーシティ・インクルージョンと似た考えにも思えますが、もう少し視点は高いと思います。ダイバーシティ・インクルージョンはあくまで「人」に注目していると思いますが、本書はチーム、組織、文化、構造、なども認め、全体に関わっていくのです。
まさにシステムコーチングのシステムに対して関わっていく姿勢に似ていると思いました。
さいごに
この本の書籍の学びをどうやって活かしていくのか考えてみます。
個人の育成
スキルと考え方の両面を支援するのが良さそう。成人発達理論では水平的成長(スキルの成長)と垂直的成長(考え方の成長)があります。本書では水平的成長で解決できない課題にぶつかったとき、やむを得ず垂直的成長が起こると書かれていました。
スキルを伝えつつ、スキルを組み合わせないと解決できない課題や、考え方を変えないと解決できない課題を渡すと良さそうです。
チームの育成
チームのキーワードは多様性の統合だと思います。
まずは、本書でも登場した「視点取得(他者の視点に意識を向けて自分の視点を広げる)を意識すると良さそう。複数人いると複数の視点が集まります。だから考えを共有することが視点取得に繋がりそうです。たとえば、Aさんの考えを共有すれば、Bさん、CさんにAさんの視点取得ができます。このように個人の考えをチームへ共有することで、視点取得が広がっていくのです。この考えはSECIモデルがヒントになりそうですね。個の視点は組織へ、組織の視点は個へ、循環する仕組みを作ると良さそうです。また、このときインテグラル理論の四象限を意識して内面と外面の両方を扱いたいです。
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SECIモデルについて考えた記事です。
iucstscui.hatenablog.com