はんなりと、ゆるやかに

アジャイル、スクラムが好きが日々から学んだことをアウトプット

自己組織化と小さなチームの重要性を再確認し、その状態を築く状態を知れた一冊『TEAM OF TEAMS』

今回の本

TEAM OF TEAMS は米陸軍の特任部隊がテロ組織と戦いに苦戦したことから、「計画・実行型」組織から「適応型」組織へ変革していった話。この時代に必要な組織のあり方、リーダシップのあり方が学べる一冊だ。

以下に分かりやすい要約があったので、詳しくはそちらを見て欲しい。私がまとめるよりよっぽど分かりやすい。
『TEAM OF TEAMS』 効率性から適応力へ、チェスプレーヤーから菜園主へ - HONZ

また、著者であり、米陸軍の特任部隊を率いていたスタンリー・マクリスタル氏のTEDの動画も示唆があるので、興味があれば見て欲しい。

以下は個人的に特に大切だと思ったことをまとめていく。個人的にはアジャイルな考え、スクラムマスターの考えと似ていると感じた。

大切だと思ったこと3つ

情報共有

徹底した情報共有が印象的だ。軍事情報なので最高レベルの機密度だと思うが、O&I(オペレーション(作戦)とインフォメーション(情報))と名付けられた毎日2時間7000人が参加するミーティングを開いて、情報の透明性を測っていた。

 入り組んだ事態に立ち向かうチームは、メンバー全員がチームの状況と共通目標を把握していなければならない。それぞれが任務の目的と戦略的背景を理解して初めてその場でリスクを判断でき、チームメイトとの関わりのなかでどう行動すればいいかがわかる。サッカー選手が自身のポジション付近だけではなく、フィールド上のすべてのプレーを追わなければならないように、ネイビーシールズもメンバーそれぞれが作戦全体を確認する必要がある。チームの目標達成に連帯して責任を負い、責任が伴うあらゆることを理解しなければならない。

開発においても、自分の範囲に関連する情報は入りやすいが、そうでない部分は入ってこないことが多いと思う。効率を重視すると人数を絞って伝達することが良いとされていると思うが、各チームが自己組織化して動くためには正しい情報が必要だ。そうであれば、いざというときに優先順位が変わっても協力しやすい。

分かりやすい例えがあった。

私はチーム間の組織上の距離と関係を示そうと、砂時計の形を描いた。前線で活動するチームが上部、後方の分析チームが下のガラス部分だ。砂時計の下の部分を手で覆いながら「この部分を移動したら、前線チームに何か影響はあるだろうか?」と尋ねた。答えはノーだった。

この、チーム間の関係性が細いことをブリンク(接触不良による電気系統の不具合)と呼んだとのこと。関係性が乏しいと生きた情報がやり取りできず、それぞれの現場で満足する情報を作るだけになる。情報を生かすには共通の目的のもと共有が必要なのだと思う。

権限移譲

自己組織化するチームを作るには権限移譲は不可欠だと思う。スクラムでもスクラムチームですべて決められるようにすべきだと言われている。そうなると、組織図で上に当たる人は決断する機会を減らしていく必要が出るのだ。本書でも「より多くのことを決定する力を持ったとき、自分で決断する機会を減らさなければならない」と書かれている。

そもそも、現場から離れている上の人が、現場の人より正しい意思決定ができるとも限らない。目まぐるしく状況が変わる戦地では特にそうだ。それでも、上の人に判断を仰ぎたくなるのは、他のチームの情報がないからだと思う。

そのうえで、気を付けるべきはやはり、情報の透明性だと思った。それぞれが判断するうえで必要になる情報は組織として共有すべきだ。

人が協力し合うのは、自分たちが置かれている環境が相互依存的であることを理解したときだけだ。

我々に必要なのは、すべてのチームが邪魔されずに組織の他部門の最新情報を常に知ることができる透明性だ。この透明性は、官僚的な縦割り組織でぬくぬくと育った者にとっては落ち着かないたぐいのものだ。だが、チームのなかのチームとして一つにまとまり成功するためには極めて重要だ。

組織はその中にいる者に権限を与えるべきだが、それは意識の共有の実現という難問を解決した後での話だ。

リーダーシップ

菜園の手入れをすること、つまりチームワークが働き、維持できる状況をつくることが私の第一の仕事になった。この手で絶えず余分な枝を払い、ネットワークの形を整えなければ、特任部隊の活動を支える情報と権限委譲の微妙なバランスが保てず、成功もおぼつかなくなる。最高指揮官でなければ、我々に必要な活動のリズムや透明性、壁を越えた協力を推し進めることはできないと気づいた。

U理論で「土壌を耕す」というメタファーが登場していました。直接、具体的なことを指示するのではなく、文化を作ったり、情報の透明性を測ったり、各チームが自己組織化できる環境を作ることが大切だというニュアンスです。

昔、尊敬する方にリーダーシップの在り方を相談した際も「メンバーが専門性を発揮できるように環境を整えることだ」とアドバイスをくれました。

その代わりに、私は自分の行動とメッセージがぶれないようにした。毎日のO&Iでのビデオ会議は、すべてのコミュニケーションの鍵になった。その場で共有される情報が最低限の「成果物」だった

リーダとして決めることを減らしていくと、悩むのが自分は必要なのか?だと思う。要はプロダクトに対する貢献が薄く感じてしまうのだ。その件は「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」という書籍が答えをくれた。自分が決断しなくても、自分が情報を整理したり、チーム内の関係性を良くしたりすることで、生まれたメンバーによる決断は、マネージャー結果でもあるという旨が書かれていた。

やはり、リーダーのやるべきことは自己組織化の促進だと感じた。

さいごに

kindleで購入したので気づかなかったのだが、非常に分厚い書籍だ。それでも、最後まで読み切れたのはストーリーがあったからだと思う。実際の現場の話が書かれているので、ハラハラしながら、その体験から学びを得られる。

組織やチームをマネジメントしている人や、アジャイルに興味を持っている人は、参考になる部分が多いと思う。